バシャ馬くん プロローグ

今回は、バシャ馬くんがブラック企業に入社するまでの話よ。

バシャ馬くん。

これは、とある1匹の馬の物語。

彼には、幼い頃から夢見ている事がありました。

夢

いつか大きなカボチャを牽いて、たくさんの人を笑顔にしたいな。

彼は、お父さん、お母さん、そして弟の4人家族の長男です。

小さな頃から、正義感が強く、心の優しい馬でした。

お馬さん大学を卒業して入社した先は、馬脚(いわゆる運送業)の事務業務。確実な仕事と真面目な性格が評価され、彼自身もモチベーションを高く保て、毎日が楽しくて仕方が無いというほど、充実した日々を過ごしていました。

何も不自由のない毎日。

しかし、バシャ馬くんには、昔から抱いている夢を諦める事が出来ませんでした。

カボチャを牽いたら、どんな気分なんだろう。きっと楽しいんだろうな。

そんな思いを抱きながらも、バシャ馬くんは毎日を過ごしていました。

そんなある休日。バシャ馬くんは、偶然にも「カボチャが牽ける仕事」を見つけてしまったのです。

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こ、これは・・・!

バシャ馬くんは心が躍りました。

ああ・・・牽いてみたい!

バシャ馬くんは、いてもたってもいられなくなり、早速、この会社に連絡をしてみることにしました。

あ、もしもし。求人の案内を見て、連絡をさせていただきました。わたくし、バシャ馬といいま

バシャ馬くんの話が一息つくのを待たずに、早口な女性の声が聞こえてきました。

ああ、求人を見てくれたのね。ありがとう。早速だけど、これからでも面接来られるかしら?

こ、これから・・・ ですか?

そうよ。これからよ。今、電話をしたってことは、きっと私を牽いてみたいって思ったわけでしょ。私達の会社は人気があるの。だから、すぐに採用者が現れて、求人が打ち切られるわ。これは、神様から与えられたチャンスなのよ。だからこそ、時間を無駄にしちゃダメなのよ。

は、はい・・・

それじゃ、今から、すぐに来てくれるかしら。

わ、分かりました。

走るのよ!

バシャ馬くんは驚いて、電話を落としてしまいました

い、行かなきゃ・・・

電話を切ると、バシャ馬くんは、バシャ子の待つ会社へ全力で走り始めました。

走る1

夢に向かって、走って、走って

走る2

走って、走って

走る3

幼い頃から憧れていた、カボチャを牽く。その夢のために。

走り続けること4時間。

こ、ここが、残刻(のことき)商事か・・・

残刻商事が入居しているビルは、バシャ馬くんが想像していたよりも遙かに立派で、ドキドキが止まらなくなりました。

えっと、5階、5階…

バシャ馬くんは5階にある残刻商事までエレベータで行こうと思った時、張り紙を見つけてしまいます。

こ、これは・・・

残刻商事へ行かれる馬の皆様は、サイズ的にエレベータに乗れません。階段をお使い下さい。

仕方ない、階段で行くとするか。

バシャ馬くんは1段、そしてまた1段と登り始め、驚きました。

こ、この階段・・・

その階段は驚くほど登りづらい階段でした。足の踏み場が狭く、ヒズメがはみ出してしまうのです。さらに、踊り場で曲がろうとすると、体が壁に擦れたり、首をくねらないと曲がれないのです。

う、うう・・・

4時間走り続け、小刻みに震える足のせいもあり、5階まで上るのにいったいどれだけの時間が経ったのか分からないほどでした。それでも、ようやく5階の会社まで上がった瞬間、思わずたじろいでしました。

最初に目に飛び込んできたのは、会社の前で仁王立ちしていたバシャ子だったのです。

やっと来たようね。何をしてたの?遅かったじゃない!待ちくたびれたわ!!!!

そういうと、バシャ子はバシャ馬くんを社内に引き入れ、小部屋に2人きりになったのでした。

良く来たわね。私はバシャ子。人事担当もしてるの。いい、これから会社の説明をするわね。この会社は、私達カボチャを貴方たち馬が牽いて、お得意様を目的地に運ぶという仕事よ。お得意様の先で専属になる場合もあれば、テーマパークやイベントに出向いたりする事もあるわ。あとは、牽くだけが仕事じゃないの。基本的に、私達カボチャがお客様の接客をして、貴方たち馬が事務の処理もするの。といっても簡単な事務作業だから、問題ないわ。まず入社後、暫くは、仕事の流れや会社全体のことを覚えて貰うため、事務作業を覚えて貰うことになるわ。それでね・・・・

バシャ子は早口で捲し立てて説明を続けていたが、バシャ馬くんの耳には入ってきませんでした。それは、部屋の壁ギッシリに飾られている「歴代のバシャ馬たち」の写真に見入ってしまっていたためです。

僕も・・・こんな風にカボチャを牽いてみたい。

バシャ馬くんの、声になるかならないか分からない、僅かな言葉をバシャ子は聞き逃しませんでした。

そうでしょ。あなたも私達カボチャを牽いてみたいでしょ。それじゃ、この紙にヒヅメを押してちょうだい。

そういって、バシャ子は契約書をバシャ馬くんに差し出しました。

あ、僕、今、違う会社で仕事をしているんです。だから、すぐに就職することは・・・

何を言ってるの!電話を切って、すぐに走ってきたって事は、この仕事がしたいという貴方の素直な気持ちでしょ。今の会社にいて、その思いは叶うのかしら?
もう一度言うわよ。これをチャンスと思うのか、思わないのか、それで未来は変わるの。貴方の未来がどこにあるのか、よく考えるのよ。

バシャ子のその言葉に、バシャ馬くんは心が動きました。今の仕事には何の不満もない。一緒に働いている人達は、気の置けない人達ばかり。給与も良いし、週休二日・祝祭日は確実に休めている。業界の未来も明るい。
・・・そう、何の不満もない。しかし、あの会社でどれだけ優秀であっても、カボチャを牽くことはできない。今の会社を定年してから、この会社に来たとして、カボチャを牽けるほどの体力はあるだろうか・・・。

僕・・・やっぱり

バシャ馬くんは決心しました。

今は、この会社で働けません。

え? どうして?カボチャを牽きたいんでしょ?

はい、牽きたいです。だから、今の会社をちゃんと辞めて、もう一度来ます。

・・・分かったわ。貴方のその言葉には、強い決心を感じたわ。こう見えて、人を見る力はあるの。
じゃ、こうしましょう。今の仕事を引き継ぎ次第、入社をする。それで良いわね?

はい。
よろしくお願いします。

そういって、バシャ馬くんは残刻商事を後にしました。

カボチャを牽く・・・夢が叶う。

翌日、出社したバシャ馬くんは、会社を辞めることを告げました。もちろん、会社のみんなはバシャ馬くんの退社を引き留めましたが、その強い想いに誰も反対できなくなりました。

社内にバシャ馬くんが退社することが告知されると、彼の幼なじみのシカ君がバシャ馬くんを呼び出しました。

ここ辞めるって本当?

うん、本当だよ。

お前のことだから、きっといつかはカボチャを牽きたがるんだろうと思ってたから、俺は驚かないけどね。

ありがとう。

で、さぁ、俺とお前は幼なじみで、いつも一緒にいたよな。

そうだな。いつも一緒だったな。

だから、今度の会社でも、俺も一緒でもいいか?

俺がこの会社に入った理由は、お前と一緒に仕事したいからって、前にも話したことあったよな?

ああ、聞いたよ。

なら、お前のいなくなったこの会社には、何の意味も無いってことだよ。

お前らしいな。

ああ。俺らはいつでも親友で、いつでも助け合いながら生きてゆく運命なんだよ。

バシャ馬くん&シカ君

こうして、バシャ馬くんとシカ君は、引き継ぎが終わった後、二人一緒に残刻商事に入社をしたのでした。

さぁ、二人とも、この契約書にヒズメを押して。

はい。

はい。

ヒズメ

さぁ、これで、貴方たち2匹はこの会社の社員になったわよ。じゃ、早速、仕事を覚えてもらうわよ。

そういうと、バシャ子は、バシャ馬くんとシカ君を部屋に連れて行きました。

こ、これは!!!

え? え?

そこは、4つ机が並べられ、パソコンがと電話が置かれているだけの部屋でした。

新しく出来た部署だから、まだ誰もいないのよ。

あ、新しく・・・できた?

そう。私が作った部署よ。

じゃぁ、僕が貴方を牽く専門の部署ってことですね!

・・・それは、ちょっと違うの。

どういう事ですか?

この新しい部署では、馬とカボチャを希望される会社に派遣をするの。他の部門にいる「使えない奴ら」を斡旋するのが役割よ。

えっ!

マジか!

じゃ、僕は、バシャ子さんや他のカボチャさんを牽けないってことですか?

時々は牽かせてあげるわよ。私が貴方を雇ったのは、本当に優秀だと思ったからよ。この会社をもっと利益が上がる体質にすれば、私達のやりたいことがもっと会社に通るようになるわ。私達にはそれができるわ。

でも、それじゃぁ、俺らがこの会社に入る時の条件とは・・・

契約書をちゃんと読んだ?

え・・・

ちゃんとこの部署の仕事について書かれてたのを読んでヒズメしたんでしょ?

そ、それは・・・

そういう契約なの。まずは、社内の馬とカボチャのリストにマッチングできそうな、過去に契約があった企業を探すのよ!貴方たち優秀だから出来るわ。

そ、そんな・・・

いつまでもグチグチ言ってるんじゃないわよ!口を動かしてる暇あったら、さっさと働きなさい!

うー ・・・

まじかー ・・・

入社した部署ではカボチャが牽けないことが宣告されたバシャ馬くん。そして、一緒に転職をしてきたシカ君。この2匹の運命やいかに・・・

次回、「隣の芝生は焼け野原」をお楽しみに!

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